人にはさまざまな癖がありますが、その1つに「食いしばり」があります。
人に迷惑をかけるような癖ではありませんが、本人にはさまざまな悪影響を及ぼす癖なので、原因やどんな影響があるのか知っておくことが重要です。
そこで今回は、歯の食いしばりが引き起こす影響と、その治療方法について解説します。
目次
食いしばりが引き起こす悪影響
まずは、食いしばりが常態化することによる悪影響について解説します。
歯が傷つく
食いしばりによる1つ目の悪影響は「歯が傷つく」ことです。
強くかみ合わせることにより、食いしばっている歯には強い力がかかり続けます。
一時的であればそこまで大きな悪影響はありませんが、食いしばりが常態化することによって歯に負担がかかり続けてしまいます。
そうなると、歯がすり減ってしまったり、割れたりするリスクが高まります。
また、銀歯など歯に詰め物をしている場合であれば、それが外れてしまうこともあるでしょう。
このように、食いしばりを続けることによって歯に負担がかかってしまい、歯が傷ついてしまうのです。
歯槽骨が痩せる
2つ目の悪影響は「歯槽骨が痩せる」ことです。
食いしばりによる負担は、歯だけでなくその下にある歯槽骨という、歯を支えている骨にも影響を及ぼします。
食いしばりにより歯槽骨に負担がかかり続けると、次第に歯槽骨が痩せてしまい、だんだんと歯がぐらついてしまうのです。
最終的には歯を支えらるだけの歯槽骨がなくなってしまい、歯が抜け落ちてしまうことがあります。
顎関節症の原因になる
3つ目の悪影響は「顎関節症の原因になる」ことです。
顎関節症とは、あご周辺の痛みや開口時などの異音、開口に関する障害などの症状を伴うもので、食事や会話など日常生活に少なからず悪影響を及ぼします。
食いしばりによる負担は歯だけでなく、あごにも影響を及ぼすことになるのです。
結果として顎関節症のリスクを高めることになり、あごの痛みなどの症状によって生活の質を下げることになるでしょう。
身体への悪影響がある
4つ目の影響は「身体への悪影響」です。
食いしばりによる悪影響は口回りだけでなく、骨や神経にも影響を及ぼす可能性があります。
その結果、肩こりや頭痛、腕のしびれや倦怠感などの症状をもたらす可能性があるのです。
食いしばりを甘く見ていると、最終的に全身にさまざまな症状をもたらす可能性があり、日常生活にも支障をきたすことになるでしょう。
食いしばりの原因
食いしばりが癖になっている人の、食いしばりの原因になっているものは、多くの場合は「ストレス」です。
ストレスを感じることで、無意識に食いしばりをしていることが多くみられます。
現代社会は仕事や家事、育児などでストレスを溜め込みやすい時代であると言われており、きちんとストレスを発散できずにいると、さまざまな症状の原因につながることも少なくありません。
食いしばりを治す方法
上記のように、食いしばりはさまざまなリスクをもたらす原因になる癖であるため、食いしばりの自覚がある方は早めにこれを解消する必要があります。
そこで、食いしばりを治すのに効果的だとされている3つの方法について解説します。
マウスピースを装着する
1つ目の方法は「マウスピースを装着する」という治療法です。
そもそも「食いしばりを防ぐ」ということには、身体への悪影響を回避するというメリットがある一方で、無理に食いしばりをやめてしまうとストレスの発散を阻害するという側面もあります。
そのため、夜間を中心にマウスピースを装着することによって、食いしばりをしても歯への悪影響を抑えるという治療方針があります。
マウスピースはネットショップなどでも購入できますが、ご自身の歯の状態に合わせないと歯並びに問題が生じる可能性がありますので、歯科医院で入手することをおすすめします。
ストレスを溜め込まない
2つ目の方法は「ストレスを溜め込まない」ことです。
食いしばりの最大の原因はストレスであり、ストレスがなければ食いしばりの癖も自然と治っていくでしょう。
仕事などでストレスを感じることは仕方がないとしても、受けたストレスを発散してあげれば、ストレスを過剰に溜め込んでしまうことはありません。
どんな方法でストレスを発散できるかは人によって異なりますが、ご自身に合った方法でストレス発散を実践し、食いしばりの原因になるストレスを溜め込まないようにしましょう。
食いしばりをしないように意識する
3つ目の方法は「食いしばりをしないように意識する」ことです。
食いしばりが常態化してしまった場合、ストレスを発散してもなかなか食いしばりの癖が治らないこともあります。
そのため、意識して食いしばりをやめるように努力することも重要なのです。
たとえば、仕事で使うパソコンに付箋を貼っておいて、付箋に気が付いたらあごの力を弱めて、上下の歯を離してみてください。
食いしばりは集中している時など無意識にやってしまうため、集中する時にはふと気が付くサインを用意しておき、食いしばりを意識的に治す方法を実践しましょう。
まとめ:食いしばりの癖がある方は早めに治そう
食いしばりは歯や身体にさまざまな悪影響を及ぼします。
無意識にやってしまう癖なので簡単には治せませんが、ストレスを発散するなどして原因を取り除き、マウスピースを利用するなどして食いしばりによる悪影響から脱却しましょう。
この記事の著者
院長・歯科医師 西本雅英
平成2年
SJCDベーシックコース修了
藤本研修会補綴コース修了
MSPDマイクロスコープコース修了
SJCDマイクロスコープコース修了
平成9年4月
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
京阪神咬合臨床研究会