虫歯という病気は、大人になってからも発症する可能性があります。
主に歯磨きを正しくこなせていないことが原因になるわけですが、虫歯という病気は歯や口の中だけの問題というわけではないのです。
そこで今回は、虫歯を原因として起こり得る深刻な病気について解説します。
目次
虫歯は全身疾患の原因になり得る
「虫歯」というと、歯磨きを怠ることで発症し、放置すると健康な歯を失ってしまう原因になる病気として広く知られています。
子どもがかかりやすいというイメージがありますが、子どもと大人で歯の健康の基本的なメカニズムは変わりありませんので、歯磨きを怠ったなどの原因があれば大人でも虫歯になることは十分にあり得るのです。
虫歯は徐々に進行して最終的に健康的な歯を損なうことになりますので、深刻化する前に歯科医院で治療を受ける必要があります。
ですが、深刻化するまでは自覚症状が少ないケースも多く、定期的に歯科医院で検診を受けていないとなかなか発見することが難しい病気でもあります。
「歯を数本失うだけ」と甘く見ている方も少なくありませんが、実は虫歯という病気は全身疾患の原因になる可能性もある病気なのです。
虫歯を原因として発症し得る全身疾患
虫歯を放置すると、ほかの健康リスク次第ではありますが以下のような全身疾患を発症する。
脳卒中
脳出血の患者数は減少傾向にありますが、高齢になるほど発症する人が増える傾向にあります。
脳の血管は生活習慣の悪さや加齢によって柔軟性を失ってもろくなり、このような状態の血管に虫歯菌がつくと炎症が起こって血管壁が破れやすくなるのです。
虫歯を放置すると虫歯菌が増殖しやすくなり、口腔内の環境が悪化すると歯周病菌などの口内細菌の増殖を促すことになります。
つまり、虫歯の放置が脳卒中のリスクを高めるということになるのです。
肺炎
虫歯菌が増殖すると、これが肺に到達して炎症を起こし、肺炎の原因になることがあります。
また
虫歯があると痛みや違和感などで食事中にきちんと咀嚼ができなくなってしまい、そのまま飲み込んでしまうと誤って肺に入り込んでしまう「誤嚥性肺炎」の原因になることがあるのです。
誤嚥性肺炎は高齢者になるとリスクが高くなり、急性疾患の中でも高い死亡率が確認されています。
仮に一命をとりとめたとしても、誤嚥性肺炎になる恐怖から食事に対してネガティブになってしまい、栄養状態が悪化することで健康状態を悪化させ、生活の質を低下させてしまうデメリットもあるのです。
心臓病
心臓弁膜症を患っている患者さんで、手術で摘出された弁を調べたところ、半数以上に虫歯菌のDNAが検出されたことがわかっています。
心臓弁膜症は心臓に負担がかかり続けるため、心不全のリスクを高める病気です。
心臓弁膜症を引き起こす原因は加齢や動脈硬化のほかに感染症もあげられ、心臓弁膜症の患者さんは感染性心内膜炎を発症しやすくなることが分かっています。
この病気では発熱など症状が現れ、治療が遅れてしまうと心不全を引き起こしたり、心臓の中にできた細菌の塊で脳梗塞の原因になることもあるのです。
出血を伴う歯科治療も要因の一つとされているため、リスクのある患者さんの場合は歯科治療の前に担当医にそのことを話しておく必要があります。
その他の病気リスク
虫歯の末期では、根管内の細菌が根の先からあふれ出て「根尖性歯周炎」という病気を引き起こします。
この病気は「歯性感染症」という病気の始まりなのです。
歯性感染症とは、歯が原因で発症する感染症であり、具体的には以下のような病気が該当します。
- 歯槽骨炎
- 顎骨骨膜炎
- 顎骨骨髄炎
- 蜂窩織炎
- 歯性上顎洞炎
また、虫歯菌が血管内に入り込むことを「菌血症」といいますが、菌血症が重篤化すると敗血症へと移行します
早めの虫歯治療が重要
虫歯を放置するとさまざまな全身疾患の原因になる可能性があり、とくに加齢などの疾患リスクを伴うと発症リスクはさらに高くなります。
虫歯による全身疾患のリスクを抑えるためには、早めに虫歯治療を開始することが重要です。
虫歯を早期に発見して治療を済ませることができれば、菌血症などの全身疾患のリスクを高める原因を予防することができます。
しかしながら、前述のとおり虫歯を自覚することは深刻化するまで難しいことも多く、発見した時にはすでに重症化しているケースも少なくありません。
虫歯を早期発見して治療を開始するためには、定期的に歯科医院に通院して、歯の検診を受けることが重要です。
虫歯や歯周病の早期段階での発見ができるようになり、健康な歯を守るだけでなく虫歯などを原因とする全身疾患のリスクを抑えることにもつながります。
まとめ:虫歯は放置せず早期に治療を開始する
虫歯を放置すると全身疾患の原因となり、最悪の場合は命の危険にさらされることになります。
虫歯を発見したらすぐに歯科医院に通院して治療をすること、そのためには定期検診を利用して虫歯などの口腔内疾患を早期に発見することが重要です。
この記事の著者
院長・歯科医師 西本雅英
平成2年
SJCDベーシックコース修了
藤本研修会補綴コース修了
MSPDマイクロスコープコース修了
SJCDマイクロスコープコース修了
平成9年4月
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
京阪神咬合臨床研究会