よく、歯磨き粉などのデンタルケア商品のコマーシャル等で「歯垢(しこう)」や「歯石(しせき)」といった単語が使われることがあります。
何となく「歯についていると良くない物質」というイメージがあると思いますが、人によってはこれらを同一視して混同していることも少なくありません。
ですが、歯垢と歯石は全く別の物質であり、デンタルケアを疎かにするとこれらが大きなトラブルの原因になるのです。
そこで今回は、歯垢と歯石の具体的な違いと、これらを除去する方法について解説します。
目次
歯垢と歯石の違い
まずは、「歯垢」と「歯石」の違いについて把握しておきましょう。
歯垢とは?
「歯垢」とは、歯の垢と書きますが実際にはそういった存在ではなく、その正体は細菌の塊なのです。
歯の表面を触ってみると、白くてねばねばした物体が指に付着すると思いますが、これが歯垢、別名「プラーク」と呼ばれています。
前述のとおり歯垢は細菌の塊であり、1mgの歯垢に億単位の細菌が住み着いているのです。
歯垢に含まれている細菌は、食事中の糖分を栄養分として増殖を続けて、さらに粘着性のある物質を作り出すことによって歯の表面に強力にくっついてしまいます。
この細菌は「酸」を作り出す性質があり、作り出された酸が歯の表面を溶かすことで虫歯などの口腔内トラブルの原因を作り出すのです。
歯石とは?
「歯石」とは、唾液中に含まれているミネラル分が歯垢に結合することで、固く変質した物質です。歯石は歯垢と同様に細菌の塊です。そして、歯石の表面はデコボコしているため、そのデコボコに歯垢が付着し、さらにより多くの細菌が住み着いてしまうようになります。
歯の表面に付着した歯垢は、たった2日という短い期間で歯石になると言われています。
「石」と名がついている通り石灰化した歯石は極めて固くなっており、歯垢のように歯磨きで落とせる状態とは異なり、通常のブラッシングでは歯石を除去することはできません。
歯石を放置するとどうなる?
前述のとおり、唾液中のミネラル分の影響によって石灰化した歯石は、通常の歯磨きでは除去することができません。
歯垢の状態であれば通常の歯磨きでも落とすことができるのですが、多くの方は本当に正しいといえる歯磨きができておらず、どれだけ念入りに歯磨きをしても細かいところの歯垢までは完全に落とせていないのが現状です。
前述のとおり、残った歯垢は2日もあれば歯石化しますので、そこにさらに歯垢が張り付いて歯磨きでは落とせず、歯石はどんどん増えていきます。
歯石は歯垢とは異なり虫歯の原因になることはほとんどありませんが、代わりに歯周病などの口腔内トラブルの原因になることが危険視されているのです。
歯垢と歯石の落とし方
虫歯の原因になる歯垢も、歯周病の原因になる歯石も、放置することはできません。
では、歯垢と歯石を除去するためには、どういった方法が必要になるのでしょうか。
歯垢の落とし方
歯垢は歯石ほど除去が難しい物質ではなく、通常の歯磨きで十分にこれを落とすことができます。
食後数時間で歯垢が作り出されてしまいますので、それまでの間に食後の歯磨きをしておくことで、歯垢が堆積して歯石化してしまうのを防ぐことができるでしょう。
ただし、多くの方はどれだけ念入りに歯磨きをしていてもどこかに必ず磨き残しが発生しているため、これが日常的に繰り返されることで歯石の発生リスクを高めてしまいます。
とくに、歯ブラシの届きにくい歯と歯の間の歯垢は歯石化するリスクが高いので、デンタルフロスを使って細かいところの歯垢もきちんと取り除くことが重要です。
歯石の落とし方
歯磨きでのその大部分を除去できる歯垢に対して、石灰化して固くなった歯石の場合は通常の歯磨きでは取り除くことができません。
そのため、歯科医院に通院し、「歯石除去」を利用する必要があります。
歯科医院では「スケーラー」と呼ばれる専用の器具を用いることで、固くなってしまった歯石を砕いて除去することが可能です。
このスケーラーですが、最近ではネット通販などで販売されていることも多くなりましたが、自力で治そうとすると歯や歯茎を傷つけてしまうおそれがありますので、必ず歯科医院で歯石除去を受けてください。
歯科医院での歯石除去には健康保険が使えますので、1回の歯石除去で3,000円~4,000円ほどの治療費がかかります。
なお、歯石の発生状況によっては1回の通院だけではすべての歯石を除去することができないケースもあるので注意してください。
歯石の放置度合いによっては歯周病などの病気が見つかる可能性もありますので、その場合はその治療も受けることをおすすめします。
まとめ:歯石ができたら早めに歯科医院で落としてもらおう
歯石ができてしまったら、日々の歯磨きだけではこれを取り除くことができず、放置すれば歯周病などのトラブルの原因になります。
歯科医院に通院すれば専用の器具で歯石を取り除いてくれますので、早めに歯石除去を受けてください。
歯垢は通常の歯磨きでも落とせますが磨き残しのリスクもありますので、デンタルフロスを用いるなどして歯石になるまでに歯垢を除去してしまうことも重要です。
この記事の著者
院長・歯科医師 西本雅英
平成2年
SJCDベーシックコース修了
藤本研修会補綴コース修了
MSPDマイクロスコープコース修了
SJCDマイクロスコープコース修了
平成9年4月
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
京阪神咬合臨床研究会