人間をはじめとして生物の骨格標本には歯があるため、歯も骨の一部だと認識している方も多いでしょう。
厳密には違うのですが、そのイメージは決してかけ離れているわけではなく、骨と同様に歯にも「カルシウム」が深く関わっているのです。
そこで今回は、骨とカルシウムの関係について解説します。
目次
カルシウムは歯を丈夫にする?
結論を述べると、子供の頃からしっかりとカルシウムを摂取していれば、歯の健康に大きく貢献することになるでしょう。
歯の表面部分を「エナメル質」といいますが、そのほとんどがミネラル成分で構成されており、その大部分はカルシウムなどの成分です。
エナメル質が健康的な状態であることは、虫歯などの歯の病気に強い状態であり、年齢を重ねても健康な歯を失うことなく生活できる可能性を高めることになります。
もちろん、カルシウムが影響を与える代名詞である全身の骨にも良い影響を及ぼす栄養素であるため、日常的に食生活の中で効果的にカルシウムを摂取することは、いつまでも健康的な生活を送るために重要なことであるといえるでしょう。
カルシウムが歯に与える具体的な影響
では、なぜカルシウムを摂取することが、歯の健康に良い影響を与えるのでしょうか。
まず、乳歯も永久歯も、歯を形成する中でその成長に主成分の1つであるカルシウムの存在は欠かせません。
要するに歯の材料として重要な成分の1つになるわけですから、歯の成長途中にカルシウムが不足してしまうと、丈夫な歯を作ることができなくなってしまうのです。
なお、永久歯の形成はお子さん自身のカルシウム摂取状況が関わりますが、乳歯は妊娠途中に歯胚(歯の元になる組織)が形成されるので、乳歯の強さは母親のカルシウム摂取状況に依存します。
さて、人間の歯はサメの歯のように人生で何度も生え変わるわけではありませんから、永久歯が生えそろった後の大人だとカルシウムは無関係になるかといえば、そうではありません。
歯は虫歯菌や酸性度の高い食事の影響により、表面のエナメル質が溶けてしまい、これを放置すると虫歯などの病気のリスクを高めることになります。
しかし、唾液の影響で歯の表面の酸性度は中和されて、酸性度が高い状態で溶けだしたカルシウムなどの成分は再び歯に定着します。
これを「歯の再石灰化」といいますが、カルシウムなどの栄養が不足していると再石灰化がスムーズに行われず、虫歯のリスクが高まるのです。
そのため、私たちは生まれる前を含み、歯の健康のためには食事でカルシウムをしっかりと摂取する必要があります。
カルシウムの多い食材と歯の健康に重要なその他の栄養
歯の健康にはカルシウムの存在が欠かせませんが、カルシウムさえあれば健康な歯を維持できるというわけではありません。
歯の健康にかかわるその他の栄養もしっかりと摂取することによって、丈夫な歯をいつまでも維持できるのです。
カルシウムの多い食事
カルシウムを含んだ食材の代名詞といえば「牛乳」で、実際にカルシウム含有量は多く、牛乳を使った乳製品でも効率よくカルシウムを摂取できます。
乳製品以外だと、小魚や大豆製品、小松菜などの野菜にもカルシウムが多く含まれています。
見てみるとお子さんが苦手とする食材も多いので、お子さんが苦手としていない食材を中心に子どもの頃からしっかりとカルシウムを摂取できる食生活を送らせてあげてください。
カルシウム以外に重要な栄養
丈夫な歯を維持するためには、カルシウム以外にも歯の健康に関わる栄養を意識して食生活を考える必要があります。
まず、カルシウムと同じくらい重要度の高い「リン」は、肉類や魚、乳製品や卵といった高タンパクな食材に多く含まれている傾向にあり、一般的な食事に多く含まれているためカルシウムほど意識しなくても問題はないでしょう。
次に重要度の高い栄養は「ビタミンD」です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を効率化してくれる栄養であり、鮭やサンマなどの魚類や、乾燥きくらげや干しシイタケなどのキノコ類に多く含まれています。
また、太陽光を浴びると体内でビタミンDが作られるため、日常的に日光を浴びる生活習慣を心がけることも効果的です。
ほかには「ビタミンA」も歯のために摂取したい栄養で、これは歯のエナメル質を強くする効果があります。
人参やほうれん草などの野菜のほかに、卵(卵黄)やレバーといった食材にも多く含まれており、脂溶性ビタミンであるため炒め料理や揚げ料理のように油を使った調理法で食べると効率よく吸収できます。
まとめ:効果的にカルシウムを摂取して歯の健康を維持しよう
カルシウムを日常的に摂取することは、歯の健康にとって欠かせない要素の1つとなります。
カルシウムを多く含んだ食材は牛乳のように、大人でも苦手としている食材も多いため、現代日本において不足しがちな栄養の1つです。
また、カルシウム以外にも歯の健康に関わる栄養は多いので、バランスの良い食生活を送ることを念頭に置いて、歯の健康に重要な栄養を効果的に摂取してください。
関連記事
この記事の著者
院長・歯科医師 西本雅英
平成2年
SJCDベーシックコース修了
藤本研修会補綴コース修了
MSPDマイクロスコープコース修了
SJCDマイクロスコープコース修了
平成9年4月
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
日本顕微鏡歯科学会
京阪神咬合臨床研究会